抑うつ神経症とは、文字通り、抑うつ状態が慢性化した状態のことを言います。
そして、外見に現れる症状は、うつ病と大変よく似ておりますが、医学的には、全く別の病気として扱われています。
もちろん、抑うつ神経症は、自律神経失調症や不安障害、心身症にも分類されない病気です。
うつ病の原因は、現代ではまだ精確に解明されてはいませんが、脳内物質のセロトニンが深く関わっていることがわかってきました。
セロトニンとは、脳内の神経伝達物質の一種であり、人間の身体の精神状態を整える上で最も重要な働きをしています。
うつ病は、このセロトニンの働きに異常が生じることにより発症することが解明されつつあります。
これに対し、抑うつ神経症とはどのような症状でしょうか。
症状だけを見れば、抑うつ神経症は、憂うつ、無力感、無気力、悲哀感、絶望感など、うつ病と酷似した症状です。
抑うつ神経症は、原因がはっきりと特定できるという点でうつ病とは異なります。
例えば、それまで元気な生活をしていたにも関わらず、死別、別居や離婚、仕事の重大ミスなどにより、突然、抑うつ状態になることがあります。
このように抑うつ神経症は、特定の環境や事件など明確な原因があり、かつ、抑うつ状態が慢性的に続く状態のことを言います。
原因も違えば、うつ病と抑うつ神経症の治療方法も異なります。
うつ病の治療には、セロトニンの働きを正常にするための抗うつ剤を使用します。
これに対し、抑うつ神経症の場合は、薬を使うことよりも、むしろ、カウンセリングや生活アドバイスに力を入れます。
そして抑うつ気分の原因となっている悩みを解決していきます。
又、抑うつ神経症は、うつ病で見られるようなセロトニンの機能異常とは全く異なる症状なので、基本的に抗うつ剤を使われることはないかと思われます。
しかし、現実的には、抑うつ神経症とうつ病の区別は、お医者さんから見ても区別をするのは大変難しい状態です。
患者さんに聞いても曖昧な回答しか返ってこないケースが多いため、さらに見極めを難しくしています。
例え原因が特定されたとしても、抑うつ状態が長期になり、ストレスが蓄積されて精神的な異常を生じている場合には、うつ病の可能性も出てきます。
このように、抑うつ神経症かうつ病かを判断するのは、医師の判断だけではまだまだ難しいというのが現実のようです。